メディアと文学 ― 目次 ―
第一章
I 一八四〇年代スタイルの確立
1 一八四〇年代までの出版業と文学の変化
十八世紀、十九世紀初期におけるロシアの出版業と近代化/市場化する出版業とラズノチンツィ(雑階級人)の登場/ドストエフスキイの職業意識
2 新たなスタイルの模索
輸入されたまなざし/出版者が受けた影響/木口木版画/技法の説明と成立の由来/文集(アリマナフ)の登場/ロシアにおける木版画/木口木版画の担い手たち/ガヴァルニの影響
3 自然派
ロシアにおけるリアリズムの模索とラズノチンツィ/都市の生理学/サークルと知識人/ペトラシェフスキイ・サークルに入会した人々
II『百枚の絵』
1 木版画集『百枚の絵』
『百枚の絵』とは何か/木版画とメディアのつながり
2 二次創作の創造性
内容と思想/版画の階層化と読者/読者の二極分化/『百枚の絵』の新しさ/購読者を得られなかった理由
III 四〇年代スタイルの解体
1 ペトラシェフスキイ事件
ペトラシェフスキイ事件
2 四〇年代スタイルのその後
その後のネクラーソフ/受容層の欠落と四〇年代スタイルの衰退/五〇年代におけるゴーゴリ作品の扱い/五〇年代のゴーゴリ作品の読者/四〇年代スタイルの終焉
第二章
ゴーゴリ作品の受容の転換点
大改革の時代
文学の大衆化
I 複製されるゴーゴリ
1 ボクレフスキイのイラストレーション
作品の断片化/『死せる魂』の知名度を上げたイラスト ボクレフスキイの『死せる魂』/ボクレフスキイとその作品/ボクレフスキイ作品の文化的系譜/ボクレフスキイによる人物造形
2 複製されるイラスト
ボクレフスキイの絵の再版/二極化する複製/複製の歴史
II 教育改革とゴーゴリ作品の読み方の変化
1 一八六〇年代におけるゴーゴリ作品の読みかえ
ゴーゴリ作品の読み方の変化/ロシアの教育制度/教育改革の生み出したもの
2 教育例
教育学者/ゴーゴリ作品の授業例/新しい教育プログラムとしてのゴーゴリ作品/正統な文学としてのゴーゴリ作品
III 雑誌『ニーヴァ』とゴーゴリの古典化
1 イラスト週刊誌『ニーヴァ』
雑誌『ニーヴァ』とは/『ニーヴァ』の無料付録/『ニーヴァ文学著作集』の集客力
2 マルクス出版社の『ゴーゴリ著作集』
『ゴーゴリ著作集』第十版/付録の内容/独占的な出版
3 読者の創出
出版者の使命/読書スタイルの提案/古典文学の記号化
4 ニーヴァの成長の背景
読書環境/『ニーヴァ』の購読部数の多さ/地方の購読者/郵便の発達/大衆読者の登場/ニーヴァの販売網の大きさ
IV シンボル化への道
1 ゴーゴリ作品にみる大衆化の原理――啓蒙とシンボル化
民衆向けの出版活動/シンボル化とコンテンツの単純化
2 移動展覧派とシンボル化
移動展覧派/移動展覧派の活動範囲/《五月の夜》/ゴーゴリの愛好者たち/移動派の目的と観客層の拡大/メディアとしての絵画の変質
3 エキゾチシズムの夢
雑誌『世界のイラスト』/ゴーゴリ作品のエキゾチシズム/シンボル化の傾向
4 出版で生じた新しい受容形態
シンボル化/イラストの出版/シンボルのみの提示/国民的な財産という意味づけの先行
第三章
I 大衆化
1 悪 書
スイチン出版社
識字委員会とスイチンの比較
識字委員会の活動と良書志向/スイチンによる悪書出版/良書への方向転換/その後の啓蒙活動
啓蒙をめぐる立場の違い
識字委員会とスイチンによる読者の調査/一八九〇年代における識字委員会の成功/識字委員会の出版方針と民衆観/スイチンの悪書に対する立場/ニコーラ市場の本の世界とスイチンによる啓蒙活動
2 広義の異本
異本による読み方の多様化
イラストの様々な役割/識字委員会によるイラスト付きの出版物/ゴーゴリ作品の受容の拡大/異本が生んだ読者の数/異本が作った新たな読み方
多様なジャンルの「異本」
ルボーク/普 及/楽しみ方
異本が進める大衆化
キャラクター商品/グジェリ焼/異本と受容集団の結合/異本はオリジナルに優先する
II 異本論
1 二次創作の可能性
集団的創作による典型の創出
ルールの抽出/異本の収斂が典型を生む
ルールを産出するシステム
物語を通じた探求の旅/個別的な営みとルール化のシステム/ハイ・コンセプト出版と共通知識/自律的なシステムモデル――オートポイエーシス
2 受容を捉える論理
進化論の論理/
メディアの進化
知覚の延長としてのメディア/共 変
ランダムな世界
コミュニケーションの産出
一九〇二年
3 映画『死せる魂』
映画『死せる魂』概要/映画『死せる魂』の不明な点
映画史における『死せる魂』の位置づけ
ルボーク映画のテーマ/集団的な創作が生んだ『死せる魂』
ゴーゴリ作品が映画に宿るまで
八分間のフィルム/撮影の苦労/映画でゴーゴリを表現する方法/客層――新たなコミュニケーションの場